こんにちわ、パパナースのYugo(@yugo_10)です。
糖尿病薬には作用が異なるさまざまなタイプの経口血糖降下薬があり、治療の主体となっています。
看護の現場では他の病気の治療のために入院した糖尿病の患者が、どのような糖尿病薬を使っているかを把握することは大切です。
特にインスリン注射は種類によって投与方法が異なることがあるため、投与時には十分な注意が必要です。
超速効型や持効型溶解は皮下注射でないといけません。一方、速効型は静脈注射することもあるので、投与方法について十分に確認をする必要があります。
看護師のインシデントでも、特に多いのがインスリン関係のものです。内容としては単位や投与するタイミング、または投与経路の間違い、インスリンの打ち忘れ等々。
この記事ではインスリンのタイプごとに異なる作用の仕組みや副作用など、看護に役立つ知識を紹介していきますので、最後まで読んでいただければ嬉しいです。
もくじ
インスリン注射の目的
インスリンは血糖を下げることが可能な唯一のホルモンですが、この絶対的な不足状態が糖尿病です。
インスリンの分泌・働きが低下した患者に対し、不足したインスリンを補うことで、血糖コントロールを行います。
インスリン製剤は、体外からインスリンを補充する目的で使用する薬剤です。
作用発現時間や効果持続時間によって、いくつかの種類に分類されます。皮下注射で使用することが多いですが、場合によっては静脈注射が可能な製剤もあります。
インスリン注射の適応

インスリン分泌が低下した1型糖尿病や膵性糖尿病の患者であれば、絶対適応となります。また、周術期、妊娠期間中や授乳時については、経口血糖降下薬が使用できないため、インスリン療法が絶対適応となります。
これらのほか、ステロイドを使用している患者の場合は、インスリン以外では対応が困難となることが多いため、使用されるケースが多いです。
超速効型インスリンは、効果の発現が早いため、迅速な対応が行いやすく、食事が摂れないときなどに使用しやすいです。
静脈注射が可能である速効型インスリンは、高血糖からの昏睡(糖尿病性ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による)などのときに、シリンジポンプを用いて持続的に静脈注射を行うときに使用します。
患者状態によって1日1~4、5回、1~2種類のインスリンを使用します。このうち、超速効型(速効型)3回と持効型溶解(中間型)1回を行う方法を、強化インスリン療法と呼びます。
- 1型糖尿病
- 食事・運動・内服薬だけでは血糖コントロール不良な、2型糖尿病
- 糖尿病合併妊娠(糖尿病の女性が妊娠した場合)
- 重篤な感染症
- 全身管理が必要な外科手術時など
副作用と観察
インスリンの効きすぎによる低血糖が主な副作用です。
また、長期にわたってインスリン製剤を使用している患者は皮下結節を形成することがあります。
インスリンによる皮下脂肪の肥大が原因ですが、皮下結節が形成された部位は血流が低下しているために、インスリンの効果が減弱することがあります。
インスリン注射を行う際には、同じ部位に打たないように毎回部位を変えるなどの工夫をしましょう。
インスリン注射の種類

超即効型
商品名:ノボラピット、ヒューマロ、アピドラ
作用:10分程度で効きはじめ、10分程でピークとなり、3~5時間持続
投与直後から効果が発現するため、食後の血糖上昇に対しては最も効果のあるインスリンです。食直後に投与することが可能なため、食事量が不安定な患者に対して食事量を確認してから投与することができます。
速効型
商品名:ノボリンR、ヒューマリンR
作用:30分程で効きはじめ、2時間程でピークとなり、5~8時間持続
レギュラーインスリンと呼ばれるもので、一番古くからあるインスリン製剤です。皮下注射後、効果が発現するまでに、およそ30分を要します。このため、食事の30分前に皮下注射を行う必要があります。最大作用発現時間は1~3時間で、作用持続時間は5~8時間です。
※速効型インスリンは静脈注射での投与が可能であり、シリンジポンプを使用したり、点滴本体に混注します。その際、使用する注射器は0.5mLの専用のもので、一般的な1mLの注射器とは異なるため、十分な注意が必要となります。これを間違えると、異なる量のインスリンを投与することとなり、低血糖をきたす原因となります。
混合型
商品名:ノボリン30R、ヒューマリン30R
作用:10分~1時間で早く効きはじめ、18~24時間長く持続する。
2種類のインスリン成分が混ざっている製剤です。中間型インスリンが入っているものでは、撹拌が必要となります。これが不十分であると投与された2種類のインスリン成分の割合が変化するため、効果が不安定となり、血糖値が乱れる原因となります。最近では、持効型溶解インスリンと超速効型インスリンが混合された製品が登場し、これは撹拌が不要であることから、効果の安定性に役立つと考えられています。
中間型
商品名:ノボリンN、ヒューマリンN、ヒューマログN
作用:90分程で効きはじめ、4時間程でピークとなり、24時間程持続
プロタミンという物質を速効型インスリンに添加することで、作用時間を長くさせています。超速効型にプロタミンを添加したものもあり、効果は同程度です。混濁製剤であるため、撹拌が必要です。十分な撹拌を行わないと効果にムラが出ます。
作用発現のピークまでに90分前後を要し、最大作用時間は4~12時間で、作用持続時間は24時間程度です。1日1回使用することが多いですが、1日2回の場合もあります。
持効型
商品名:ランタス、レベミル
作用:注射して1~2時間で効きはじめ、ほぼ24~42時間持続
基礎分泌を再現する目的で使用されるインスリンで、最大作用時間にピークがみられないと考えられています。安定したインスリン濃度の再現により、血糖値の安定化に寄与します。作用持続時間は24~42時間程度です。
通常1日1回の注射で済み、投与する患者によっては2回必要となるものもあります。1型糖尿病などのインスリンが枯渇している症例では、絶食時でも必ず皮下注射する必要があります。インスリン分泌能が低下している患者さんでは、周術期や検査などで絶食となる場合でも、このインスリンは中止することはできません。
インスリンの注射部位と吸収速度

部位は腹部が最も一般的で、皮膚のすぐ下に注射する皮下注射です。
インスリン注射は、針を皮膚のすぐ下の皮下組織に挿入しますので、その下にある筋肉内に入らないように、軽く皮膚をつまみあげて注射します。
皮下注射は、注射部位や注射の深さ・注射した部位の体温によって、薬剤が吸収する速度が異なります。最も速度に影響するのは注射部位です。
インスリンの注射部位は、①お腹、②上腕の外側部分、③お尻、④太ももの外側部分が適し、①>②>③>④の順にインスリン吸収が早いとされています。
注射部位によってインスリンの吸収速度が異なるため、毎回部位を変えるということはせずに、腹部なら腹部といったように同じ部位に注射することが大切です。
インスリン注射の必要物品
注射器実施の場合

- 指示のインスリン製剤
- インスリン専用の注射器
- アルコール綿
- 針捨てBOX
- 手袋
ペン型インスリンの場合
- ペン型インスリン製剤
- 専用の注射針
- アルコール綿
- 針捨てBOX
- 手袋

インスリン注射の手順・手技
注射器実施の場合
- 物品を準備する
- 手指衛生を行い、手袋を装着する
- ネームバンド、氏名、生年月日など患者の本人確認を行い、注射指示を確認する。
- 白濁タイプのインスリンはバイアルを両手で挟み、ゆっくり転がして混和する。
- バイアルのゴム栓をアルコール綿で消毒
- 注射器に、指示の投与量と同量の空気を吸引し、バイアルに注入する
- バイアルを逆さまにして、インスリンを注射器に吸引する
- 注射器内の気泡を取り除く
- 接種部位をアルコール綿で消毒
- 皮下脂肪をつまみ、30℃の角度で注射針を刺入する
- 血液の逆流がないことを確認して、インスリンを注入する
- 注入後は、刺入部を揉まずアルコール綿でおさえる
- 注射器・注射針を針捨てBOXに捨てる
- 出血が少量ある場合もあるため、その時は絆創膏を貼っておく
- 患者に終了を告げ、気分不快時にはすぐに知らせるよう声をかける
ペン型インスリンの場合
- 物品を準備する
- 手指衛生を行い、手袋を装着する
- ネームバンド、氏名、生年月日など患者の本人確認を行い、注射指示を確認する。
- 白濁タイプのインスリンは、注射器を10回以上振るか転がす。
- ゴム栓をアルコール綿で消毒する
- 専用の注射針をゴム栓に刺し、時計回りに取り付け、キャップを外す
- ダイアルを『2』に合わせる
- 針先を上に向けて、空気を上に集めてから空打ちする
- 空打ち後、ダイアルが『0』になっていることを確認して、指示の単位にダイアルを合わせる
- 注射部位を選択して(前回注射部位から2~3㎝離す)、円を描くように消毒する
- 皮下脂肪をつまみ、注射器を90度の角度で穿刺する
- 注入ボタンが『0』になるまで押しきり、押し続けたまま、6~10秒待ってから針を抜く
- 刺入部は揉まずにアルコール綿で押さえる
- リキャップはせずに、針を外してそのまま針捨てBOXに捨てる
- 患者に終了を告げ、気分不快時にはすぐに知らせるよう声をかける
低血糖に注意

低血糖になる理由
- 食事の時間が遅かった、摂取量が少なかった
- インスリンの量が多かった
- 激しい運動や長時間運動をした
- 入浴
- 下痢など
低血糖症状
血糖値60~70mg/dl以下…空腹感・感動悸・冷汗・脱力感・頭痛・めまいなど
血糖値50㎎/dl以下…意識レベルの低下、見当識障害、痙攣などの中枢神経症状が出現
低血糖時の対応
低血糖時は、早期発見と適切な対応が重要となります。
入院患者に低血糖症状が現れたら、すぐに血糖測定をして、リーダーや医師に報告して指示を仰ぎましょう。大抵は、下の指示が出るため、早急に実施して患者の症状や血糖値の回復をチェックします。
①内服できる場合は、ブドウ糖5~10gを内服 (角砂糖や飴、ジュースでもOK)
➁50%ブドウ糖を20ml or 40ml静注
インスリンや糖尿病薬を使用している患者は、常に低血糖症状を起こすリスクがあることを念頭においておきます。
また患者自身にも低血糖症状の危険性を把握してもらうことが大切なので、低血糖時の対応も日頃から指導しておくことが大切です。
まとめ
インスリン製剤の種類や投与経路、投与する際の手技や副作用の観察について紹介しました。
特に高齢者の入院患者では2型糖尿病を抱えている人も多く、血糖測定とインスリン注射を実施することが多いです。
また、糖尿病を患っていない患者でも手術後は血糖値によってはインスリン注射を行います。
前述しました通り、インスリンによるインシデントやアクシデントは多いため、この記事を読んでインスリンの種類や投与方法、注意点などについて知っていただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
糖尿病について詳しく知りたい方はこちら⇒【国立国際医療情報センター】糖尿病情報センター
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