こんにちわ、パパナースのYugoです。
大好評の看護師の豆知識シリーズ、本日は「急変時のアドレナリン」の使い方を紹介していきます。
心停止の対応を学ぶ上で避けて通れないアドレナリンの話。

アドレナリンって血圧を上げる薬ってことは知ってるけど、普段は使わないし。
急変の場面で使うけど、どんな効果が期待されるのかイマイチわからない…
日々の業務の中でも急変場面になかなか遭遇しないとう看護師は多いようで、急変時対応の仕方を教えて欲しいという声が寄せられています。
中でも、アドレナリンの作用や投与タイミングについて、おさらいしていきたいと思います。
これを機会に一緒に薬剤について勉強しましょう。
もくじ
はじめに
アドレナリンは「ボスミン」「エピネフリン」と呼ばれることがあります。成分は同じなので間違えないようにしましょう。
間違いやすい薬剤で「ノルアドレナリン」というものがあります。こちらも昇圧に使う薬ですが、ノルアドレナリンは心停止では使用しないので覚えておいてください。
この二つの違いはまた別の記事で紹介していきたいと思います。
参考に薬剤の外観や名称の写真を載せておきます。

心停止時に期待される効果
まず、アドレナリンやノルアドレナリンなどの血管作動薬にはα作用とβ作用があります。
血管作動薬ごとの違いやα作用とβ作用の割合は画像を参考にしてください。

アドレナリンを投与すると、α作用によって血管収縮が生じます。
この血管収縮が低血圧時、及び心停止時の血圧を上昇させることで循環が改善し自己心拍再開(ROSC)をもたらすというのはイメージが付きやすいと思います。
また、アドレナリンによる血圧上昇をもう少し紐解いていくと、CPR中の心筋灌流圧および脳灌流圧を増加させます。そして、この効果が蘇生成功の鍵とされています。
ただし、心臓や脳の循環動態を改善する効果を期待しても、”神経学的予後への有益性は乏しい”というデータがあります。
一方、β作用は心筋収縮能や心拍数に働きかけます。
結果、心筋の電気活動の増加や心筋収縮力や心筋酸素消費量を増加させます。
しかし、例えば心臓の虚血が原因で心停止となっている場合、心筋酸素消費量を増加は悪影響となります。
アドレナリンはα1、α2、β1、β2受容体刺激作用を持つカテコラミンです。
強力な血管収縮作用であるα作用と、心拍出量増加作用のβ作用を持っているために、心停止での心肺蘇生において第一選択薬となっています。
また、β刺激による気管支拡張作用、ヒスタミン遊離抑制作用を持っているために、アナフィラキシーショック時における第一選択薬にもなっています。
しかし、正常人に使用した場合には強力なα、β作用によって不整脈を誘発してしまうため、心停止時にのみ静注で投与できますが、アナフィラキシーショック時には筋注での投与となるので注意してください。
このように、悪影響もありそうなのでアドレナリンは”諸刃の剣”と言われたりもしますが、心停止という最悪の状況下ならではの薬剤とも言えそうです。
アドレナリンを使う場面は非常に限定的で、①心停止、②アナフィラキシーショック、③喘息の重症発作時と覚えて、まず問題ないでしょう。
一方、間違われやすいノルアドレナリンは、α作用は強いですがアドレナリンのほうが強力です。また、β作用はほとんど期待できないので、通常心停止時には使いません。
アドレナリンの効果
- α作用の血管収縮によって血圧が上昇
- β作用によって心筋収縮や心拍数を上昇
心停止アルゴリズムと合わせて覚えるアドレナリンの効果
アドレナリンの作用について学びました。
次はアルゴリズムにおけるアドレナリンの位置づけです。
心室細動(VF)/無脈性心室頻拍(pulseless VT:pVT)の場合
VF/pVTのときは2回目のショックの後にアドレナリンを投与します。
VF/pVTに対する治療の原則は、迅速な除細動と質の高いCPRです。
除細動のあと、2分間のCPRを行います。この際、除細動のあと、次の除細動を行うまではアドレナリンを投与してはいけません。
二回目の除細動のあと2分間のCPRを行いリズムチェック、その後もVF/pVTが継続していれば、次はアドレナリンを投与します。アドレナリンの投与はその後も3~5分毎に行います。
この3~5分というのは病院や施設によってルールが決まっているので、自分の病院のマニュアルを確認しておきましょう。
初回の除細動後にアドレナリンを投与してはいけない理由
VF/pVTの傷病者が蘇生される場合、大部分は除細動で蘇生される。もし初回除細動後、次の除細動を行うまでにアドレナリンを投与すると、除細動で蘇生された傷病者にアドレナリンが投与されることとなり、そのが原因で再度VF/pVTを起こす危険があります。
このため、アドレナリンは2回目の除細動を行うまで投与してはいけないとされています。
無脈性電気活動(PEA)/心静止(Asystole)
PEA/Asystoleに対する治療の原則は、質の高いCPRと原因治療です。
PEA/Asystoleの診断後は質の高いCPR、アドレナリンの投与、原因の探索及び治療が同時並行で行われます。
VF/pVTの場合と異なり、アドレナリンの投与はPEA/Asystoleの診断直後から開始されます。アドレナリンはその後、3~5分毎に投与されます。この時間も病院のルールのよって変わります。
PEA/Asystoleに対して原因の探索及び治療が必要になることは前述しました。
理由としてはPEA/Asystoleのほとんどは救命には至りませんが、もし原因が早急に診断出来て治療が行われた場合は救命の可能性が残されているからです。
ちなみにVF/pVTの場合は原因のほとんどが急性冠動脈疾患であるため、あえて治療の重要項目の中に原因探索が挙げられていません。
PEA/Asystoleの治療の3本柱
- CPR
- アドレナリン投与
- 原因治療
まとめ
アドレナリンの作用と使い方について紹介しました。
アドレナリンはCPAの種類によって使い方が変わってくるので状況をしっかり観察して、どんな急変が起こっているのか確認しましょう。
急変時のCPRについては別の記事で紹介する予定なのでお楽しみに。
また、アドレナリンの投与間隔や心停止のアルゴリズムに関しては最新の『JRC蘇生ガイドライン』にも細かく記載されておりますので、興味がある方は読んでみてください。
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