
ICUに配属になって、挿管患者を受け持つんだけど血ガスの見方がわかりません…💦
今日はこんな新人看護師のために血ガスについて解説していきたいと思います。
僕も新人時代に血ガスの有効的な見方がわからず、よく先輩にどやされてました…(笑)
新人だけでなく2~3年目の看護師でも、普段なんとなく見ている血ガスの項目を少し深掘りしてみていきたいと思います。
血液ガス分析装置は救急外来や集中治療室、手術室などには設置されていることが多いと思います。救急医や集中治療医、麻酔科医およびそこに配属されている看護師などが主に使用します。
血液ガス分析は緊急検査として行われることが多いため、病棟で分析装置を置いている病院はないと思います。
なので、病棟看護師は急変時以外で触れることがないと思うので、この記事を読んでもらって救急外来から患者が入院してくるときに、患者の状態を把握する指標になれば幸いです。
血液ガスって何?
血液ガスは動脈血から採取され、呼吸・循環の状態を示します。
それはただ単に酸素化や換気能の良しあしを示すだけでなく、解釈によっては患者の全身状態を知ることのできる優れた検査です。
重要なことは、検査結果で示された数字をどのように解釈して、数字同士のつながりを理解し、臨床に当てはめるかということです。
血液ガスは、主に次の3つの生理学的な側面を評価するのに役立っています。
①酸素化 ②肺胞換気 ③酸・塩基平衡
これら3つの評価を示すものは、血液ガス検査ではPaO2、PaCO2、pHがあります。それぞれに基準値がありますが、その値が示すもの、また基準値から逸脱することの臨床的意義を解説します。
血液ガスを分析する
血液には、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)などのガスが溶け込んでいます。
これらの血液ガス(特にO2やCO2)とpHやHCO3–などを測定することにより、肺や心臓、腎臓などの臓器や体液の状態を知ることができます。
これらを測定することを血液ガス分析 (Blood gas analysis:BGA)と呼びます。
動脈血ガス分析(以下、血液ガス分析)は、橈骨動脈などから動脈血を採取し、専用の器機で測定します。 血液ガスは、ガス交換と酸塩基平衡の指標となります。 CO2分圧やO2分圧などは、動脈血と静脈血でかなり差があるため、呼吸機能の状態を知るためには動脈血によるガス分析が必須となります。ただし、ベースエクセス(BE)や電解質は動脈血と静脈血であまり差がないため、酸塩基平衡の状態だけを知りたいときは、静脈血によるガス分析でも可能です。
血液ガス分析で分かる4つのこと
血液ガス分析で分かることは以下の4つです。
- 酸素化
- 換気
- 腎機能(代謝機能)
- 酸塩基平衡
酸素化はPaO2とSaO2で評価します。
換気はPaCO2で、代謝(腎機能)はHCO3–、酸塩基平衡はpHで評価していきます。
血液ガス分析の主な基準値と内容(成人)
値 | 基準値 | 内容 |
pH | 7.4±0.05 | 酸性かアルカリ性を示す |
PaO2 | 80~100 mmHg | 動脈血における血液酸素化能力の指標 |
SaO2 | 95~97% | 動脈血中の酸素化したヘモグロビンの割合 |
PaCO2 | 35~45 mmHg | 肺胞換気量の指標 |
HCO3– | 22~26 mEq/L | 腎臓における酸塩基平衡の調節因子 |
BE | -2~+2 mmol/L | HCO3–の過不足を示す |
Lac | 0.56~1.39 mmol/L | 組織の酸素需要と酸素供給間の不均衡を早期に示唆する指標 |
AG | 10~14 mEq/L | 代謝性アシドーシスの酸塩基平衡障害の特定と精査に用いられる |
血液ガスで注意が必要なのが急性循環不全です。
循環機能障害が重篤な場合などの症状の1つとして、代謝性アシドーシスがあります。このときの血液ガスデータは、pH・HCO3–の低下をきたします。
代謝性アシドーシスをきたした病態を早急に把握し、治療を開始する必要があります
血液ガス分析をどう使う?
PaO2の数値では酸素化の状態を知ることができるため、酸素投与の適応や投与量を検討することができます。
SpO2が90%以上あっても血液ガスを測定してみたら、PaO2が50㎜Hg台しかないなんてこともあります。こんな場合はすぐに挿管を検討しなければなりません。
PaCO2の数値では肺胞における換気状態を知ることができるため、補助呼吸や人工呼吸器の設定に役立ちます。
pHの数値からは代謝性あるいは呼吸性のアシドーシスか、アルカローシスかを知ることができます。
BEの数値は塩基の過剰か欠乏かを知ることができ、またこのBEの変化は、代謝性の変化を表します。
血ガスの良いところは、患者の体が恒常性からどう外れようとしているのかを評価できるところです。
患者は病状によって酸塩基が上下します。pHを見ることで「何が原因でアシドーシスやアルカローシスになっているのか」を判断する基準になっており、治療の指標として役立てます。
血液ガスで酸素化を評価する
PaO2が低いとき
酸素化の評価は、PaO2で評価していきます。
病棟など血液ガスを利用しない部署では、パルスオキシメーターを用いて測定する経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を用いるのが主流ですよね。
PaO2が低い場合は、低酸素状態が疑われます。一般の病棟では血液ガスを取ることはそう多くはないでしょう。その場合は、SpO2の値で評価していきます。
酸素解離曲線で見てもわかるように、SpO2が低下していると、PaO2も低下していると考えられます。 低酸素状態が考えられるときは、以下の手順でアセスメントをしていきます。
①患者の様子を観察する
SpO2が93%以下になると顔色が悪いなど、見た目でも推測できることがあります。患者の様子を観察し、さらに呼吸回数、脈拍などのバイタルサインを確認し、顔色や疼痛の有無などを確認します。
➁データの信頼性を確認する
SpO2が低くても患者に異常がない場合は、SpO2が正しいかどうかの評価をします。 患者が低酸素状態になっている原因には、大きく分けて以下の4つが考えられます。
- 肺胞低換気になっている
- 換気血流皮の不均衡
- シャントがある
- ガス交換障害がある
患者に起こっている低酸素の原因がどれに当てはまるのかをアセスメントして、それぞれにあったケアを行っていきます。
PaO2が高いとき
PaO2が高くても一般的には問題となりませんが、酸素投与している患者のPaO2が高い場合は過剰な酸素を投与していることになります。
近年では「酸素は有毒であり、高濃度の酸素投与により高酸素性肺障害が起こる」といわれています。
PaO2が高い場合は、アセスメントをして、酸素投与をしているのであれば適切な量に調整します。
血液ガスで換気を評価
呼吸不全などにより、呼吸状態が障害されるとCO2の排泄が阻害され、PaCO2の値が上昇し、高二酸化炭素血症となることがあります。
PaCO2が上昇している場合は肺胞低換気、PaCO2が低下している場合は肺胞過換気であるといえます。
呼吸状態を評価するにはこちらの記事☞血液ガスで呼吸状態を評価する方法
酸塩基平衡を評価する
pHは身体の恒常性を評価するのに欠かせない指標です。
このpHはPaCO2とHCO3–によって調節されています。
pHの異常には以下の4つがあります。
- 呼吸性アシドーシス
- 代謝性アシドーシス
- 呼吸性アルカローシス
- 代謝性アルカローシス
これらは患者の全身状態や血液ガスのデータなどを見ながら、アセスメントしていきます。
例えば、PaCO2だけが突出して高値である場合はわかりやすいですが、代償作用が働いていると、まずそもそもPaCO2とHCO3–のどちらが下がったのか、代償作用によって上昇したのはどちらかといったことを見ていくのが難しくなります。
pHの異常 | 主な病態 |
呼吸性アシドーシス | 気管支喘息の重責発作、COPD等の呼吸不全、睡眠時無呼吸症候群など |
代謝性アシドーシス | ショック、循環不全、下痢、糖尿病、嘔吐、下痢、腎不全、敗血症など |
呼吸性アルカローシス | 間質性肺炎、過換気症候群など |
代謝性アルカローシス | 嘔吐、クッシング症候群、利尿薬使用、低カリウム血症など |
酸塩基平衡のアセスメントは次の順番で行います。
①pHをみる
pH=7.35未満をアシデミア、pH=7.45以上をアルカレミアといいます。
アシデミアとアルカレミアとは、単にpHのみで考えるものです。
②「CO2」「HCO3–」をみる
pHの原因が何かを「酸であるCO2」「酸を中和するHCO3–」から考えます。
「CO2」が原因の「pH」変化を、呼吸性アシドーシス/呼吸性アルカローシスといいます。
「HCO3–」が原因の「pH」変化を、代謝性アシドーシス/代謝性アルカローシスといいます。
アシドーシスでは、血中のpHを下げようとする病態を考えます。
pH7.35未満であることが多いですが、7.35以上でもアシドーシスを考慮する場合があります。
アルカローシスでは、血中pHを上げようとする病態を考えます。
pH7.45以上が多いですが、7.45未満でもアルカローシスを考慮する場合があります。
※アシドーシスの生体への影響
心筋収縮力の低下、心拍数の減少、興奮伝導の障害、末梢血管の拡張、カテコールアミンの反応性低下などを起こし、心機能を抑制して不整脈を発生させる。
※アルカローシスの生体への影響
心収縮力の増加、心拍数の増加、低心電図、末梢血管の収縮、不整脈を起こし、骨格筋のけいれんを起こす。
血液ガスを理解する
血液ガスで見るべき項目
なんとなく血液ガスのことがわかりましたか?
では、実際に血液ガスを測定したら、どこから見なければいけないのか??とい疑問ですが、これは患者の状態によって変わってきます。
人工呼吸器装着中や呼吸状態が悪い患者であれば、pH、PO2、PCO2は最優先で見ます。
術後であれば、Hb、Lac。高血糖高浸透圧症候群など糖尿病の重症症例は血糖値や電解質に注目。
ここで電解質と書きましたが、血液ガスはなと血中のナトリウムやカリウム、カルシウムといった電解質も瞬時に測定することができます。
電解質異常のある病態であれば、この項目も見ていく必要があります。
新人の頃は全てを把握するのが難しいかもしれませんが、慣れてくると見るべき項目がわかってきます。
医師や先輩に相談
血液ガスの見かたやどこを見ればいいのかわからない場合は思い切って医師に相談してみます。
優しい医師なら、病態によってどこを見たらいいのか、どうなっていたら良いのかを教えてくれると思います。医師が難しいようなら、職場の先輩に聞いてみましょう。
酸塩基平衡についてははっきり言って、何度本を読んでも理解するのは難しいです(笑)
病態によって、この場合はどこの項目を重点的に見ればいいのかが分かればいいと思います。
ICUやERであれば、ほぼ毎日血液ガスを測定する機会はあると思いますので、たまには時間のある時にゆっくり眺めてみるのも面白いかもしれませんよ。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
少しだけですが、血液ガスのことについて理解をしていただけましたか?
病棟ではあまり触れることがないので中々難しいですよね…。ただ急変時や緊急入院の患者は高確率で血液ガスを測定していると思いますので、この記事を参考に測定結果を眺めてみてください。
患者の状態を照らし合わせることで、どの項目がどの症状に関係しているといった事がわかってくると思います。
別の記事でも血液ガスについて紹介していきますので、ぜひ読んでみてください。

