好評の実習攻略シリーズです。
前回の臨地実習はこうやって乗りきれ!~成人看護学編~に引き続き、今回は老年看護です。
老年看護は文字通り高齢者との関わりになります。10代の看護学生にとって、高齢者とのコミュニケーションは中々にハードルが高いです。
僕も教員をやっていて、老年期の看護は疾患も大事だけど高齢者とどう関わるのかが一番のポイントだなぁと感じていました。
今は超高齢化社会ですので、今後さらに高齢者は増えていくでしょう。
なので、ここでしっかりと高齢者への看護を学んでおきたいところです。
と言っても、難しく考えることはなくて成人の慢性期看護とやることはほぼ変わりません。
この記事を読んで、実習を有利に進められる助けになれば幸いです。
老年看護ってなに?
人生の最終段階であり、加齢に伴う生理的・精神的機能の減退が顕著になる「老年期」。
この時期は、過去の生活や考え方、社会との関わり方すべてが反映される集大成の時期といえます。
高齢者の「意思」を尊重し、その人らしく日常生活を送れるようサポートする看護が「老年看護」最大の山場なのです。
高齢者との関わり方を学ぶとともに、老年期特有の病気や障害を学び、それらと共に生きる高齢者の「これまでの人生の歩み」や「価値観」などを含め、高齢者の特徴を知る事がとても大切です。
患者だけではなく家族を含めて、健康生活を支える看護を実践していくための知識や技術について学習していきましょう。
老年看護学実習を攻略

患者の価値観や個別性、自尊心を尊重
老年看護の最大の山場です。
いきなり最初から山場??と思うかもしれませんが、これがこの実習のポイントなのです。
人は年齢や人生経験を重ねていくと、生活習慣、文化的背景、家族等によって個別性や価値観が確立されていき、様々な判断を決定する”もと”となります。
これがその人の個性というわけです。
なぜここが山場かと言うと、高齢者は病気になっても今までの生活習慣をすぐには変えられないんです。長年行ってきたことですから無理もありません。
塩分取りすぎて高血圧になってるけど、今更薄味にしてくれと言ってもそう簡単にはいかなのです。
酒やタバコに関しても、今更禁煙しろと言っても難しいんですね。
「どうせ死ぬんだから好きなことして死にたい」と考えている高齢者はたくさんいます。
結果的に高齢者の個別性や価値観を尊重しないとQOLの低下に結びつき、自尊心を傷つけてしまう場合があります。
時には、看護師として指導する場面もあると思いますが、教科書や参考書通りうまくいくとは限りません。というか、指導なんてほぼ成功しません…。
看護師⇔患者の立場ですが、それ以前に人生の先輩と10代の看護学生とでは背負ってきた人生の重みが違いすぎますよね。
高齢者の価値観や自尊心を否定せず一人ひとり対応を変えながら、良好な関係を築いていきましょう。
予防的対処の優先
高齢者になると、健康を守り、QOLを維持するため常に予防的な対処が優先されなくてはなりません。
一つの発病や障害は、2次障害を引き起こしやすく、合併症が生じることによって、基礎的疾患がさらに増悪するという悪循環をたどってしまいます。
2次的障害が起こってからでは元の状態に戻すことは難しいため、予防的な対処を実践していく必要があります。
高齢者は身体的機能の低下などがみられるため、転倒のリスクが高くなります。また、転倒することによって『大腿骨頸部骨折』を起こしやすく、高齢者はこれが原因で寝たきり状態になることが多いです。
慢性期病棟にいくと、かなりの割合で『大腿骨頸部骨折』の患者に遭遇します。
そして、看護学生が実習で受け持つパターンも多いです。
転倒予防のため、歩くときはしっかり足をあげるように説明したり、環境調整を行うこと、移動時は患肢側に立ち見守るなどの予防的対処が必要となります。
ちなみに寝たきり状態の患者を受け持つことも多いです。
拘縮が強く、自分で寝返りもできない患者の場合、褥瘡発生のリスクが非常に高いです。褥瘡を予防するために除圧を行い、体位変換を促すのがポイントです。
日々の行動計画に2時間ごとに体位交換をする計画を入れておきましょう。
その際には根拠や注意点などもしっかり答えられるようにしておくとポイント高いです。
社会的役割の喪失
高齢者は社会的役割の喪失、それに伴う社会との関わりの減少、友人・知人の死による孤立感が生まれやすいと言われています。
実際、孤立感からナースコールを頻回に鳴らす患者がいます。このような場合は患者の話しを傾聴し、何を求めているのか確認しましょう。
中には、ただ話を聞いて欲しいだけの患者もいます。
老年実習では、実習自体ゆっくりとしています。病棟もバタバタと忙しくなることも少ないです。
なので、じっくり話相手になることで患者の生きることの喜びを見いだし、社会交流・参加を促すきかっけになればいいですね。
家族支援
成人看護では健康に対する自己管理が必要となります。これは、患者の理解力があるため患者本人への指導が特に重要となるからです。
しかし高齢者は記銘力の低下・適応能力の低下により、新しい習慣を受け入れて継続していくことが難しいことは前述しました。
そこで特重要になるのが家族への指導です。
退院をしたあと、患者の生活を支えるのは家族です。そこで家族に退院後の日常生活の注意点など説明したり、パンフレットを作成するなどして、家族が患者にどう接すればいいのかイメージしてもらうことが必要になります。
また、社会資源の活用についてもパンフレットなど作成するのもいいアイデアかもしれません。
老年看護実習の学び
高齢者は末梢性感覚神経の老化によって多くの感覚機能(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚など)が低下するため成人に比べて反応が鈍くなります。
また、ホメオスタシスが壊れやすく変動が大きかったり、加齢による生理機能や心身の機能の予備力が低下しているため、自覚症状がはっきりとわからない場合が多いです。
そのため、患者の訴えだけでなく、客観的データ(バイタルサイン、表情、言動、検査データ)を十分に観察することが大切です。
まとめ
高齢者は、今までの自分の思いや時代背景からなるべく人の手を借りないようしようとします。
そのような患者が入院することで、他人に迷惑をかけているという思いが生じ、トイレ移動やその他の日常生活の中で遠慮してしまう人も多いようです。
こうした患者の思いを尊重するために、患者の話を傾聴することで性格や生きてきた時代背景などを情報収集しアセスメントにつなげていくことが大切になります。
患者の全体像を把握し個別性を考慮した看護介入を実施するために、患者の生活歴・家族歴・価値観・性格・生き甲斐・趣味などを把握していきましょう。
加齢や認知症により記憶力が低下しており、患者の正確な情報を把握することが困難なことがあります。ときには患者だけでなく家族にも確認していくことが必要となります。
退院したあとは在宅に帰ることも考え、介護認定を受けているか、どの程度の社会資源の知識を持っているか、家族との関係についての情報も視野にいれていく必要があります。
若い看護学生さんには、高齢者がこれまで生きてきた時代背景や思いを理解するのは難しいかもしれませんが、じっくり話を聞いて少しでもアセスメントに繋げられるよう頑張ってください。
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