糖質制限が流行する中でよく耳にする機会が増えたケトン体。
医療従事者であれば、糖尿病患者のケトアシドーシス等でその名を聞いたことはあるのではないでしょうか。
近年では「糖質制限」の人気が高まるなか、ケトン体が注目を浴びる場面も増えています。
ケトン体とはどのようなものでどんな働きをするのか、そして身体にはどのような影響があるのか詳しくみていきましょう。
体に良さそうな気はするけれど、ケトアシドーシスのように病気になる原因になる気もする。
ケトン体には一体どんな効果があるのかを知らない方も多いはずです。
そこで、ケトン体とはそもそも何なのか、メリットとデメリットについてお伝えします。
実際に僕もケトン体ダイエットに挑戦してみたので、そちらの方もふまえて紹介していきます。
もくじ
ケトン体とはどんな物質なのか?

ひとことで言うと、ケトン体とは脂肪合成や脂肪分解の過程で発生する代謝産物です。
糖質制限とケトン体の関係について、詳しく説明していきます。
人の身体は糖質をエネルギー源として使うことは誰もが知っていることと思います。
しかし、一般的にあまり知られていないのが、実は糖質の他にも人はエネルギー源として使える物質があるのです。それが「脂肪酸」です。
体内に存在するブドウ糖の量が減ると、肝臓に蓄えられているグリコーゲンが分解されて利用されるようになります。しかし、グリコーゲンは24時間ほどで枯渇してしまうため、その後は筋肉中のたんぱく質や脂肪細胞に蓄えられている脂肪酸がエネルギーとして使われる仕組みです。
ケトン体は、脂肪酸から作られます。脂肪細胞に蓄えられている中性脂肪はそのままだとエネルギー源として利用できないためです。中性脂肪のケトン体への変換は肝臓で行われ、アセチルCoAという物質にまで分解されます。
この働きが起こるのが糖質制限で、ケトン体を利用したダイエットを「ケトジェニックダイエット」と呼びます。糖質源を極端に減らすと体内のグルコースの量も減ってケトン体が作られることがあります。糖質制限ではケトン体が増加していることを「脂肪がよく燃えている状態」と肯定的に受け取られることが多々あります。
解糖系回路とケトン体回路

解糖系回路
1つ目の糖質系回路は、糖質を分解、エネルギーにする代謝です。解糖系回路では、食物から摂取した糖質を乳酸やピルビン酸に分解。エネルギーの放出・貯蔵、また、物質の代謝・合成に重要なATPという物質を生成する化学反応が起きています。
糖新生回路
2つ目の糖新生回路は、筋肉中のタンパク質や脂肪細胞からブドウ糖を作り、エネルギーに変換します。糖新生回路は、体のブドウ糖が不足したときの非常システムのような回路です。
ケトン体回路
上記の2つの回路は、糖質を分解したブドウ糖をもとにエネルギーを生み出す回路です。3つ目のケトン体回路は、体のブドウ糖不足が続き、エネルギーを生み出せなくなったときに糖新生からシフトします。
ケトン体回路では、ブドウ糖ではなく脂質を分解した脂肪酸、脂肪酸がエネルギーになるときに生まれるケトン体をエネルギーとして使用します。
また、ケトン体回路では食べ物に含まれる脂質や、体に蓄えられる脂質をエネルギーに変換することから、ケトン体回路では脂肪が燃焼するといわれます。
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ケトン体が悪者にされる理由

ケトン体は「出ていれば脂肪が減っている証拠」と持ち上げられることも多く、実際にケトン体ダイエットは認知症や心疾患などに対する療法として用いられてきた背景もあります。実際の医療現場でも、ケトン体を熱量源として提供するケトン食で対応する食事療法が認められています。適用される人にとっては病気を治療するための食事となるのです。
しかし、ケトン体が体内で増えるということは標準的な状態ではなく、生命を維持するための防御であるということを認識しておかなければなりません。
自己判断でケトン食療法を行うとかえって身体に悪影響を与えてしまう場合もあります。また、持病がある方は必ず医師へ相談することと、誰にでも適しているというわけではないということを念頭に置いておきましょう。特に持病に糖尿病を抱えている人は特に注意してください。
ケトジェニックダイエットの副作用としては、急性症状にはむかつき、吐き気や無気力、慢性的にはLDL-コレステロール値の増加、微量ミネラルの欠乏、アシドーシス(酸塩基平衡異常)、尿結石などが挙げられます。
ケトジェニックダイエットについては肥満の改善に有効とされる一方で、このような弊害があることも知っておかなくてはなりません。
対象者によって良し悪しが左右される食事なので、自分にとって本当に必要なのかを見極める力が必要だといえるでしょう。
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ケトン体質のメリット
ケトン体体質のメリットをいくつか紹介します。
ケトジェニックダイエット
1つ目のメリットが、脂肪を燃焼してエネルギー源にできるため、ケトジェニックダイエットができることです。
ケトジェニックダイエットは、脂肪をエネルギー源とするため、中性脂肪が減ります。糖質を制限するダイエット法で、たんぱく質を摂取するため、ほどよく筋肉をつけながら痩せられるのも特徴です。
ダイエット効果を得られる理由は、脂肪が優先的にエネルギーに変換されるためです。通常、人の体では糖質が優先的にエネルギーとして使われます。体がケトン体体質になっていると、その状態に変化がでるため、脂肪が燃焼しやすい状態となるのです。そのためにも糖質を制限する必要があるのです。
アンチエイジング効果
2つ目のメリットが、ケトン体質にアンチエイジング効果が期待できる点です。
また、老化を予防できるだけでなく、近年の研究ではアルツハイマー病の食事療法としての効果も期待されています。
カロリーを制限した状態に人体が置かれると、サート3という長寿遺伝子が活性化します。病気のもとになる酸化ストレスを抑えるサート3は、ケトン体体質になったときにも活性化します。糖質の摂取を最小限に抑えられることで、アンチエイジング効果に繋がります。
メンタルの安定
3つ目のメリットが、メンタルが安定するという点です。
ケトン体体質になると不安感やイライラした気持ちになることが減少して、穏やかな気持ちになる方が多くなるといわれます。
人は食事などから糖質を摂取すると血糖値が上昇し、その血糖値を下げるためにインスリンが分泌されます。短時間で血糖値が乱高下すると、眠気やイライラといった症状を引き起こします。そのためケトン体体質は、メンタル安定にも効果的なのです。
以上が、ケトン体体質になると体に表れるいくつかのメリットです。次にそれぞれの根拠も見ていきましょう。
では、次にどうやってケトン体質になるのかを紹介します。
ケトン体質になるためには

ケトン体体質になる方法
ケトン体体質を目指すには、低糖質・高脂質の食事が必要です。
低糖質のために糖質制限をするときには、糖質抜きではなく、適正糖質量はきちんと摂取しましょう。
ケトン体体質を目指す際、1日の糖質摂取量の目安は50gです。一般的な糖質制限では約120gが摂取量の目安のため、ケトン体体質を目指す場合は、制限が厳しめです。
食事を低糖質に変えられたら、食事に良質な脂質をプラスしましょう!
また、ケトン体回路を動かしやすくするためには、1日に必要なカロリーのうち、60%を脂質で摂取すると良いといわれます。
低糖質・高脂質な食事を継続することで、ケトン体が作られやすい状態を維持しましょう。
ケトン体体質までにかかる期間
完全に糖質の摂取をやめた絶食状態の場合、最短4日でケトン体体質になります。しかし、4日間の絶食は、危険なためおすすめできません。
健康を害さず、ケトン体体質を目指すには、低糖質・高脂質な食事を最低でも2週間続ける必要があります。
2週間という期間の理由は、体内でケトン体回路が活発に働き、ケトン体が主なエネルギー源になるまでの期間が、およそ2週間のためです。
実際にケトン体体質に、体がどのくらい変化したのかを知りたい場合は、リトマス試験紙や器具で検査するのが良いでしょう。
ケトン体質になっているかチェックする方法

リトマス紙
ケトン体体質の代表的なチェック法は、尿検査や血液検査です。尿検査では、リトマス試験紙のような紙(尿定性試験紙)を尿に浸して、色の変化によってケトン体の多い、少ないを確認できます。
尿検査の試験紙は、病院でもらう他に、市販のものをお店やネット通販で購入可能です。検査にかかる時間は、数分程度のため、体質の変化を確実に確認したい方におすすめの方法です。
ブレスチェッカー
ケトン体の中にはアセトンという揮発性の高い物質があり、皮膚や呼気として排泄される。
このアセトンを呼気でチェックするのがブレスチェッカーです。息を吹くだけで計測してくれて、尿検査よりも精度が高いと言われています。
アセトンは、除光液に使われていてあの独特なツンっと鼻を突くような匂いがアセトン臭です。
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ケトン体体質を目指すためのアイテム

ケトン体体質を目指すためには、低糖質な食事と良質な脂質の摂取が大切です。
それでは、手軽にケトン体体質を実現できるおすすめのアイテムを紹介します。
MCTオイル
一番手軽な方法はMCTオイルです。
MCTは、日本語では中鎖脂肪酸と呼ばれる成分です。
ココナッツやパームフルーツに含まれる植物成分のMTCは、一般的な油よりも素早く消化・吸収されるのが特徴といわれています。
そんなMTC100%のMTCオイルは、体内でケトン体の生成を促してくれる食品です。一般的な油の4倍早く分解されて、エネルギーに変換されるというMTCオイル。摂取の目安は毎食小さじ1杯ほどです。
注意点としては、消化吸収が速い油のため、一度に多量のMCTオイルを摂取すると、お腹が緩くなってしまうことがある点です。お腹が緩くなってしまう人は量を減らすと良いでしょう。
油なのでそのまま飲むのはおすすめしません。お茶などに混ぜても油が浮いた状態になるので抵抗のある人も多いと思います。
おすすめは、普段使っているサラダのドレッシングに混ぜて使用すると、違和感食べられます。
冷凍の低糖質弁当
継続しやすい食事としておすすめなのが、パッケージになっている製品です。
パッケージになっている製品は、糖質量等を自分で調べたり、考えたりすることなく糖質制限を行えるメリットがあります。その中でも、冷凍の弁当であれば、賞味期限を気にすることなく利用できます。
冷凍の低糖質弁当のメリットは、調理が簡単な上に、バラエティに富んだメニューを楽しめることです。調理の際は、冷凍庫でストックしている冷凍の低糖質弁当を温めるだけ。ケトン体体質を目指している方には、医師や栄養士監修の低糖質弁当がおすすめです。
ただ、どうしても費用がかかってしまうのでお財布事情と相談してください。
EPAなどのサプリメント
ケトン体体質を目指すとき、オメガ3脂肪酸と呼ばれる良質な脂質の摂取が推奨されています。オメガ脂肪酸は、植物由来のαリノレン酸、魚類など由来のEPA、DHAの3種類です。それぞれ、血圧を下げたり、動脈硬化を予防したり、血糖値を改善したりする効果があるといわれます。
青魚由来で、食材からは接種しにくいEPAやDHAはサプリメントからの摂取もおすすめです。サプリメントを選ぶ際は、商品の科学的根拠や安全性が保証されている機能性表示食品や、特定保健用食品の製品を選ぶのが安心です。
ケトン体質の注意点

ケトン体体質までに時間がかかる
1つ目に、ケトン体体質になるまでにある程度時間がかかる点です。
ケトン体体質に体が変化していく中で、ケトインフルエンザという症状を感じるケースもあります。吐き気や頭痛、糖質の渇望などを伴うケトインフルエンザの解決策は、ケトン体体質に体がなることです。
ケトン体体質の独特な臭い
2つ目に、ケトン体体質になったときの体臭の問題です。
ケトン体体質になった方は、甘酸っぱい独特のニオイのケトン臭を放ちます。人によっては不快に感じるこの臭いですが、体がケトン体体質に変化している目安ともいえるでしょう。
食べ物に制限が多い
3つ目に食べられるものに制限が多い点です。
ケトン体体質に体を変化させるときには、糖質を制限します。友人との食事や外食時にメニューを選ぶときには注意をしましょう。食べられるものに制限がある分、他の食事制限に比べて、カロリーを摂取しても太りにくいのは嬉しいポイントです。
ケトン体体質になるまで時間がかかると、食べられるものが制限される理由は、ケトン体が生成されるのは、糖質の供給がストップされたときに作られるためです。
また、体が糖質をエネルギー源にできなくなってから、ケトン体が作り出されるまでは最短で4日かかります。絶食をせずにケトン体体質になるためには、約2週間ほどの期間が必要な点を考慮しておきましょう。
特有のケトン臭の原因となるのは、ケトン体に含まれるアセトンと呼ばれる物質です。どうしても臭いが気になる方は、ケトン体自体が酸性の物質のため、緑黄色野菜・果物・海藻・きのこ類のようなアルカリ性の食材を摂取しましょう。
まとめ
ケトン体体質になると、脂肪を燃焼してエネルギーに変換できるため、ダイエットやアンチエイジング効果があります。
ケトン体を目指すなら低糖質な食事と良質な脂質の摂取が大切です。低糖質の冷凍弁当からMTCオイル、サプリメントまで、紹介した食品などを利用して、ケトン体体質を目指してみましょう。
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